メロディー(3話)
〔 数日後 ・ 昼休み ・ 練習室前 〕
梁太郎・・・何の用かな?
わざわざ昼休みに呼び出さなくても・・・
夜、電話で済むのに・・・。
ううん、「来い」って言ってくれれば、梁太郎の家に行くのに・・・。
「ガチャ」
(
が、練習室に入った )
あっ、ごめんね・・・待った?
いや・・・・・・
梁太郎・・・?
怒ってるの?
眉間に深〜い皺が寄ってるョ?
一々茶化すな。
ごめんなさい・・・。
でも・・・不機嫌なんだね・・・?
何かあったの?
連弾・・・上手くいってるのか?
えっ?
あー・・・、どーかな・・・?
私は、精一杯やってるけど・・・
喜多君の足を引っ張っちゃってるのは、確かだね・・・。
じゃぁ・・・、止めちまえョ。
あんな奴と弾くの・・・。
試験までは、まだ十分日数あるんだし・・・
「自分が劣ってる」・・・なんて、劣等感持って演奏しても
良い音楽にはならないぞ?
そー簡単にはいかないョ・・・。
喜多君が「お前じゃ駄目だ」って、断わってきたんなら分かるけど
私から断わるなんて、絶対出来ない。
喜多君も「精一杯やってくれればいい」って、言ってくれてるし・・・
私も、出来る限りの事して、喜多君に応えたいと思ってる。
無理・・・するなョな・・・。
練習だって、すればいいってもんじゃないんだぞ?
そんな事・・・梁太郎に言われなくたって分かってる・・・。
ピアノから逃げてる人になんて・・・言われたくないョ・・・。
んっ・・・・・・
俺はただ・・・
があいつに、ついていこうと・・・
その事だけに重きを置いて練習してたら・・・
の弾きたいピアノに・・・
の音楽にならないんじゃないかと思って・・・。
梁太郎・・・・・・。
あんまり卑屈になる必要、ないんだぞ?
あいつと連弾続けるなら・・・
「劣ってる」なんて考えないで、自分らしく、堂々と演奏しろョな。
うん・・・。
そんな事より・・・梁太郎、何か話しがあったんじゃないの?
ん・・・?
連弾の楽譜・・・
えっ?
お前・・・
楽譜を、俺の家のポストに入れて・・・
その後、何も言ってこないから・・・・・・
渡すなら、手渡ししろョな。
俺の家まで、来たんだろ?
うん・・・。
でも・・・
梁太郎に会って渡したら・・・
「本気にしたのか?俺、お前とピアノ弾く気なんて無いョ」
って、言われるんじゃないかと思って・・・。
信用無いんだな・・・、俺。
他の事ならともかく・・・
ピアノに関しては、梁太郎が何考えてるのか、分からないんだもん・・・。
あんなに上手なのに・・・普通科行ってるし・・・。
俺は、音楽で競うつもりは無いんだ。
・・・で・・・どーすんだ?
一緒に練習、するのか、しないのか・・・?
ハッキリしてくれないと、俺にだって予定ってもんがあるし・・・。
いいの?
迷惑じゃない?
そーいう気遣いは、最初に考えろ。
楽譜まで置いていって・・・「いいの?」もへったくれもあるか!?
そーだね・・・。
何だ・・・?
今日は、元気ないんだな・・・?
どーかしたのか?
連弾・・・やっぱり上手くいってないのか・・・?
うん・・・。
喜多君は、「こんなもんで十分だ」って言ってくれるんだけど・・・
何ヶ所か、合わないところがあるの。
微妙なんだけどね・・・。
呼吸が合わないっていうか、何ていうか・・・
しっくり?スッキリ?しないんだョね・・・・・・。
どの辺だ?
( 梁太郎が、楽譜を開いた )
えっ・・・?
梁太郎・・・楽譜持って来たの?
どの辺だ!?
時間、そんなに無いんだから。
うん・・・。
あっ、ココ。 それから・・・この辺・・・。
ココかぁ・・・。
細かいパッセージだな・・・。
じゃぁ・・・この前から弾いてみろ。
えっ?
いいから、早く弾いてみろ。
うん・・・。
(
が、ピアノを弾き始めた )
( 「 梁太郎・・・何が言いたいんだろぅ・・・?
私、一人で弾いても・・・意味無いんだけどな・・・ 」 )
あっ・・・・・・
( 梁太郎が、
の隣でピアノを弾き始めた )
梁太郎・・・・・・
俺の顔なんて見てないで、ちゃんと弾けョ。
うん・・・。
( 「 次の小節から、合わせにくいんだ・・・ 」 )
俺に合わせようとしないで、普通に弾け。
う・うん・・・。
( 「 わっ・・・、す・凄い、ぴったり合ってる・・・。
梁太郎が、合わせてくれてるんだ。
キレイだな〜・・・、いいハーモニー。
呼吸が、鼓動が・・・まるで同じリズムで刻まれてるようだ。
こういうのを、息が合ってるっていうのかな? 」 )
何、ニヤニヤしてんだョ?
べ・別に・・・ニヤニヤなんて・・・
(
が弾く手を止めた )
ん? どーした?
やっぱり・・・梁太郎は凄いョ・・・。
この曲・・・
喜多君が選んだのだから、結構難しいんだョ?
・・・そーだな。
楽譜渡してから、まだ何日も経ってないのに・・・
それなのに・・・
自分のパートは、完璧で・・・
私に合わせてくれる余裕まである。
完璧なんかじゃない。
誤魔化してる所も何ヶ所かあるし・・・弾き込めてもいない・・・。
それに・・・
俺は、
に合わせてるつもりは無いぞ?
えっ・・・?
そりゃ・・・
連弾だから、「合わせよう」って気持ちはあるけど・・・
が、喜多に合わせようとしてるのとは、全然違うな。
俺・・・
が、次に「どんな風に弾こうとしてる」のか・・・
リズム、テンポ・・・呼吸も含めて、何となく分かるんだ。
だから、俺が合わせてるのは、タイミングじゃなくて・・・心。
この曲を、
と同じように感じられるように・・・
お前の音に耳を傾け、同調してる。
それも・・・意識してじゃなくて・・・
無意識に同調してる。
だから「合わせてる」って感覚はない。
二人で一つの音楽を、奏でてるだけだ。
梁太郎・・・・・・。
あー・・・、そろそろ休み時間終わりだな・・・。
本当だ。
また・・・一緒に弾くか?
うん。
じゃぁ・・・都合の良い日言えョ。
夜なら・・・いつでも大丈夫だし・・・
前もって言ってもらえれば、休日でもOKだ。
うん、ありがとう。
礼を言うのは・・・俺の方だ。
また、
とピアノが弾けて・・・嬉しいョ。
と奏でる・・・二人だけの、音の世界だな・・・。
To be continued 2007,6,7 up