憧れ(2話)



               〔 修兵の副官室 〕



           恋次: 着いたな・・・。
               心の準備はいいか?



                え・・・・・・
                い・いえ・・・、やっぱり、いいです。

                ココで下ろして下さい。
                お願いします・・・。

                会う勇気なんて・・・ありません・・・。



           恋次: 檜佐木さーん、入りますョー。



                阿散井副隊長・・・・・・。



               ( 恋次が扉を開け、中に入った )



           恋次: 檜佐木さん・・・ココって、薬箱ありましたョね?



           修兵: ん?



           恋次: こいつ、檜佐木さんとこの子なんですけどね・・・
               見ての通り、怪我してるんで・・・治療してやって下さいね。



               ( 恋次が を、修兵に渡そうとした時・・・ )




                あ・阿散井副隊長・・・・・・



               (  が恋次にしがみついた )



           恋次: ハァ??

               何やってんだョ?
               離せって・・・。




                い・嫌です・・・。




           修兵: お前・・・阿散井が好きなのか・・・?



           恋次: 違いますョ!
               こいつは、檜佐木さんの事が・・・・・・




                はい!!
               
                わ・私は・・・
                阿散井副隊長の事が・・・大好きで・・・・・・




           恋次: ハァ!?

               お前なぁ・・・、ココまで来て嘘ついて、どーすんだョ??




                う・嘘じゃありません。

                私は・・・阿散井副隊長が・・・好きなんです・・・。




           修兵: ・・・だそうだ。

               俺・・・今すぐ、隊長の所に行かなきゃなんねぇんだョ。

               阿散井、ちゃんと手当てして、部屋まで送ってやってくれ。
               薬箱は、あそこだ。



           恋次: 檜佐木さん・・・
               違うんですョ、こいつは、檜佐木さんの事が好きで・・・・・・




                ち・違います!
                私は・・・阿散井副隊長の事が・・・・・・好きなんです・・・。




           修兵: 阿散井のどこがいいのかね〜?

               自分の所に、こんなに格好良い副隊長がいるのになー?




                え・・・・・・・・・・・・

                そ・それは・・・・・・・・・・・・




           恋次: だから、こいつは檜佐木さんの事が・・・・・・



           修兵: 阿散井・・・
                の事・・・よろしく頼む。

               怪我・・・酷いようだったら、四番隊に連れてってやってくれ。



           恋次: はい・・・。



           修兵: 良かったな。
               拾ってくれたのが、阿散井で・・・。




                檜佐木副隊長・・・・・・・・・・・・



               ( 修兵が、部屋から出て行った )




           恋次: お前・・・いいのか? あんな事言って・・・?

               俺は、知らねぇぞ?




                申し訳ありませんでした・・・。




           恋次: 俺は、構わねぇけど・・・。




                阿散井副隊長・・・、ありがとうございました。

                これで・・・
                何も想い残す事なく、辞めていけます・・・。




           恋次: 辞めねぇ方が、いいんじゃねぇのか?




                えっ・・・?




           恋次: 檜佐木さん・・・お前の名前知ってた。

               お前に気があるとか・・・そんなんじゃねぇだろうけど・・・
               お前の事知ってるのは、確かだ。




                それは・・・
                副隊長だから、自分の部下の事くらい・・・・・・




           恋次: 知ってる訳ねーョ。

               顔、会わせた事ねぇ平隊員の名前まで、一々憶えてねぇ。

               よっぽど有能なヤツとか、自分の周りで作業してるヤツとか・・・
               顔見て、名前分かんのなんて、そんな程度だ。

               しかも・・・今日のお前の顔は・・・酷いしな・・・。
               素の顔知らなきゃ・・・誰かなんて、分かんねーョ。




                檜佐木副隊長は・・・
                全員の事を、覚えてるのかもしれないじゃないですか・・・?




           恋次: 俺の事・・・バカにしてんのか?




                い・いえ・・・そんなつもりじゃ・・・・・・




           恋次: まぁ、檜佐木さんがお前の事を、知ってようが、知ってまいが・・・
               お前は、絶対辞めるな!




                えっ?
                何でですか?
                私なんて、ココに居たってしょうがないし・・・・・・。




           恋次: お前がいけねぇんだ。

               自分の事しか、考えねぇから・・・
               少しは、俺の迷惑も考えろ!




                ・・・すいません。

                あ・あの・・・
                私の事はいいですから・・・どうぞ、お戻りになって下さい・・・。
                ご迷惑おかけしました・・・。




           恋次: バーカ!
               そんな事言ってんじゃねーョ。

               さっきお前は・・・
               第三者の居る前で、「俺の事が好きだ」って宣言した。

               その後、俺とお前は、二人きりにされた・・・。




                はぁ・・・。




           恋次: これで、明日や明後日に、お前が「辞める」って言い出したら・・・
               悪いのは、「俺」みてーじゃねぇか。




                は?




           恋次: 「は?」じゃねーョ。

               お前が、俺のこと「好き」って告白して・・・
               その後すぐ「辞める」なんて言い出したら・・・

               原因は、俺がお前を振ったか・・・
               もしくは、お前が好きだって言ってきたのをいい事に・・・
               俺がお前に・・・「何か」したみてぇじゃねーか。

               どっちにしろ・・・
               お前が辞める原因は・・・「俺」って事になるだろー?

               いい迷惑だョ。
               絶対、辞めるな。

               辞めるんだったら・・・
               檜佐木さんに、自分の気持ちを全て吐露してからにしろ。
               いいな!?




                え・・・、そ・そんなの無理です・・・。
                言えるくらいなら・・・さっき言ってます・・・。

                ちゃんと理由言いますから・・・。




           恋次: 何て?




                だから・・・、私は弱いから・・・・・・




           恋次: 檜佐木さんに・・・
               阿散井と何かあったのか?って聞かれたら?




                「何もありません」って・・・・・・
                「阿散井副隊長の事は、関係ありませんから」って・・・・・・。




           恋次: 檜佐木さん目の前に・・・
               堂々とハッキリ言えんのか?

               もじもじしたり・・・
               恥ずかしそうに、うつむき加減だったりしたら・・・
               お前が、否定すればする程・・・「肯定」に聞こえるんだぞ?




                え・・・・・・




           恋次: 当分、辞めるのは御預けだな。

               戦闘にかり出される事は、ねぇんだろ?




                はい・・・。




           恋次: なら、命の心配しなくていいんだから、ココに居ろ。

               裏切ったら、ただじゃ置かねぇからな!




                ・・・・・・はい。




           恋次: よし。

               じゃぁ・・・治療するか。




               ( 恋次が を、ソファーに座らせた )




                阿散井副隊長・・・
                本当に、もぅ・・・大丈夫ですから・・・。




           恋次: 薬箱はと・・・・・・

               コレかぁ。

               足、出してみろ。




                えっ?




           恋次: 足が一番酷いだろ?
               早くしろ。




                い・いえ・・・
                後は自分で・・・・・・




           恋次: お前の足なんか見たって、何とも思わねーョ。
               早くしてくれ。




               ( 恋次が、 の前にしゃがんだ )




                はぁ・・・。




               (  が裾を捲り上げ、怪我した足を恋次に見せた )




           恋次: 俺の肩に掴まってろ。




                えっ?




           恋次: 少しの間だ。
               痛いけど、我慢しろ。




                はい・・・。




           恋次: 早く掴まれョ。
               何かに掴まってた方が、楽だろ?




                い・いえ・・・大丈夫です。




               ( 恋次が の手をとり、自分の肩の上に置いた )




                あ・あの・・・・・・




           恋次: すぐ済むから、頑張れョ。




                はい・・・。




               ( 恋次が治療を始めた )




                痛ッ・・・・・・・

                阿散井副隊長・・・痛い・・・です・・・・・・。




           恋次: 分かってる。
               もう少しだ・・・、頑張れ。




               (  が恋次の肩を、強く掴んだ )




           恋次: これで良しと。
               大丈夫か?




                はい・・・。




           恋次: じゃぁ・・・離してくれるか?
               お前、指の力・・・結構強ぇなー。




                えっ?

                あっ! す・すいませんでした・・・・・・。




           恋次: 気にすんな。

               後は・・・・・・顔は・・・・・・




                後は・・・帰ってから、自分でやりますので・・・・・・。




           恋次: そーか・・・じゃぁ、そーしろ。

               よく頑張ったな。
               もぅ・・・あんな訓練は、止めとけョ。




                阿散井副隊長・・・・・・・・・・・・




               (  の目から、涙が溢れた )




           恋次: 泣いたら、傷に沁みんだろー・・・?

               まぁ・・・
               泣きたい時も・・・あるョな。




               ( 恋次が を抱きしめた )




           恋次: 泣きたいだけ、泣けョ。
               顔は、見ないどいてやるからさ。




               (  が声を立てて泣いた )




           恋次: お前はバカだョなー・・・。




                えっ・・・?




           恋次: 檜佐木さんに治療してもらえば、良かったのにさ。




                で・でも・・・
                檜佐木副隊長は・・・用があるって・・・。




           恋次: 檜佐木さん・・・手・・・出したんだぜ。

               俺がお前を渡そうとした時・・・お前を受け取ろうとして・・・。




                え・・・・・・

                でも、それは・・・
                自分の部下だし・・・
                阿散井副隊長に、迷惑かけちゃいけないって、思ったんじゃないですか?




           恋次: 最終的に、俺に頼むなら・・・
               あの時点で「悪い、俺今急ぐんだ」ってな感じで、手なんか出さねーョ。

               お前が、俺の事好きだなんて言ったから・・・
               気、利かせてくれたんだろ。




                ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




           恋次: まぁ・・・
               檜佐木さんに近寄る、いい口実が出来たじゃねぇかョ。

               俺の事が知りたいとか何とか言って、話しかけてみろョ。
               任務時間外だったら、結構話してくれると思うョ。
               俺が絡んでる事だし・・・面白がってな。

               普通に話せるようになれば・・・
               そのうち、告白も出来んだろ。




                こ・告白なんて・・・絶対しません。

                それに・・・・・・




           恋次: 何だ?




                私・・・弱過ぎて・・・何の役にも立たないんです・・・。

                仕事だって・・・雑用しか、させてもらえないし・・・。

                こんな自分が・・・
                誰かの事を好きだとか・・・
                そんな浮ついた事、言える立場じゃありません。

                人を好きになる権利なんて・・・私にはありません。




           恋次: よく言うョなー!

               じゃぁ、さっきのは何なんだ?

               お前は・・・
               檜佐木さんの前で、「俺の事が大好きだ」って、言ったんだぞ!?




                あ・あれは・・・・・・




           恋次: 立場だ、権利だなんて、関係ねぇだろー。

               雑用だって、仕事は仕事だ。
               お前は、与えられた仕事を、ちゃんとやってる。そーだろ?




                はい・・・。




           恋次: なら、役に立ってんじゃねーか。

               自分の出来る事を、精一杯やる。
               それで、いいんじゃねーか?

               皆が皆、席官になれる訳じゃねぇんだョ。

               酷な言い方かもしんねぇけど・・・実力の差はある。
               どんなに努力しても、それぞれの限界があるからな。

               でも、どうだ?

               隊長以下、席官だけ居ればいいか?
               って言ったら・・・そーじゃねぇだろ?

               それぞれに、役割はあるんだョ。

               その中で、切磋琢磨して、上に上がろうともがいて・・・

               上の者は、蹴落とされねぇように・・・
               そして何よりも、敵に負けねぇように・・・必死に精進してんだョ。


               俺はお前が・・・
               人を好きになる権利ねぇなんて、思わねーョ。


               「憧れ」・・・なんて、逃げてねぇで、堂々と好きになれョ。





                そんな事言われても・・・
                自分のダメさ加減は・・・自分が一番よく分かってます・・・。

                恋だ、愛だ・・・なんて・・・
                私には、一生無縁なんです。

                阿散井副隊長には・・・心から感謝しております。

                一人で・・・帰れますので・・・。




               ( 恋次が を、抱き上げた )




           恋次: 場所、教えろョ。




                えっ?




           恋次: お前の部屋だョ。




                だから・・・一人で・・・・・・




           恋次: 俺は、檜佐木さんから頼まれたんだ。
               部屋まで送ってけって。

               檜佐木さんの大切な部下、置き去りにしてったら・・・
               後で、俺が怒られんだろー。

               部屋は、どの辺だ?




                大切なんかじゃないです・・・・・・。




           恋次: 大切に決まってんだろ!

               自分の部下、大切に思わねぇヤツなんて居ねーョ。

               部下じゃねぇけど・・・
               知り合った以上、俺にとっても は大切だ。

               早く帰ろうぜ。
               それだけの怪我して、疲れてんだろうから・・・。

                                                              To be continued            2006,11,30 up

 

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