逢いてぇ

               



                俺は今、任務で現世に来ている。
                今日で丁度、1ヶ月が経った。

                任務は、俺の本分だから・・・
                「面倒くせぇ」とか「やりたくねぇ」とかは、一切ねぇ。

                今回だって・・・
                任務中は、ひたすら「やるべき事」をやる。
                余計な事・・・考えてる暇なんてねぇ。

                危険度は低いとはいえ、油断は命を落とす事に直結する。

                俺らの仕事は・・・そんなに甘いもんじゃねぇんだ。

                それは・・・分かってる。


                しかし・・・・・・
                必ず、休息時間ってもんがある。
                夜、寝る時と・・・他にも少し・・・。


                そんな時・・・
                どうしても、逢いたくなる。


                あいつに・・・・・・


                 に・・・・・・。




                あいつの笑顔が見てぇ・・・・・・

                あいつの声が聞きてぇ・・・・・・

                あいつを・・・この手で、抱きしめてぇ・・・・・・


                逢いてぇ・・・・・・。





               
                毎晩、毎晩、眠りに落ちるまでの・・・俺にとっては、長い時間・・・。
                頭をよぎるのは、あいつの事だけ・・・。

                「他に考える事なんて、幾らでもあんだろー」

                その前に・・・
                疲れて帰って来て・・・どうして、すぐに眠れねぇんだョ・・・?


                一日の任務が終わり、俺の寝床になってるこの部屋に入り
                ドアを閉めた瞬間・・・
                毎日、韻を踏んだように、俺の口から無意識に出る・・・・・・。


                「あいつ、どーしてんだろ〜・・・?」

               
                最初の内は、あいつの事が心配で・・・・・・


                「無事だろうか・・・?」

                「仕事・・・無理してんじゃねーか・・・?」

                「変な男に、引っ掛かってんじゃねぇだろぅなー!?」


                なんて・・・
                あれこれ、あいつの身を案じてた。



                それが・・・日が経つにつれて・・・


                「逢いてぇ・・・。」

                「今すぐ、逢いてぇ。」

                「逢いてぇんだョ、何とかしろョ!」


                誰も居ねぇのに・・・叫んでる俺が居る・・・・・・。


                寂しくて・・・

                恋しくて・・・

                切ねぇ・・・・・・。





               
                今日も任務が終わり、部屋に戻ってきた。

                開口一番、「逢いてぇー!」と、叫んでみる。

                何処にも届かねぇ、俺の気持ち・・・。


                確かに俺は、 が好きだ。

                でも・・・
                 が、俺ん中をこんなに占領してるとは、思ってなかった・・・。
               

                「今、俺の何処を切っても、 が出てくるぜ」

  
                まぁ・・・これは、冗談だけど・・・

                それ程、頭の天辺から、足の先まで・・・俺ん中は、 だらけ。
                他には、何も出てこねぇ・・・。



                「どうしてんだろぅな〜・・・あいつ・・・?」


                もう一ヶ月かぁ・・・・・・。
                あいつの事だから・・・俺の事なんて、忘れてるかもな・・・。

                元々、俺の事なんて・・・頭にねぇもんな・・・・・・。




               ( コンコン )

                              
           隊員: 阿散井副隊長、少しよろしいですか?



                あぁ、入れ。



               ( 隊員が部屋に入った )



                何だ?



           隊員: あの・・・、コレなんですけど・・・。



                ん?



           隊員: 阿散井副隊長宛に「ボイスレター」が一通届いてまして・・・。



                ボイスレター? 俺にか・・・?



           隊員: はい。

               ただ・・・差出人が不明なんです。
               どうしましょうか?
               このまま・・・送り返しましょうか?



                誰からか、分かんねぇのか・・・・・・。



           隊員: はい・・・。

               一応、係りの者に問い合わせてみたんですが・・・
               「女の人」って事以外は、分からないそうです・・・。



                女・・・?



           隊員: 多分・・・
               阿散井副隊長の、ファンの子じゃないか?って、言ってましたけど・・・。

               送る締め切り時間ギリギリに、駆け込んできて
               置いて、すぐ帰ってしまったそうです。

               名前が書いてない事に気付いた時には、発送の時間になってしまったので
               とりあえず、こちらに送って・・・
               後は、阿散井副隊長の裁量にお任せするとの事です。

               いらなければ、送り返しますけど・・・どうしますか?




                んー・・・。

                暇だし・・・ちょっと聞いてみるか。



           隊員: はい。



               ( ボイスレターが、流れ始めた )



            声: ・・・・・・あれ? これでいいのかな・・・?

               確か・・・ココ押せばいいって、言われたんだけど・・・
               コレ・・・動いてんのかな?




                 ・・・・・・・・・・・・


               

            声: 「あ」「あーー」

               恋次、聞こえる?
               大丈夫かな?




                バカ・・・・・・


                あっ、お前・・・もういいや。
                この「ボイスレター」は、俺が受け取る。
                面倒かけて、悪かったな。
                今度からは、ちゃんと名前書くように言っとくョ。



           隊員: お知り合いの方ですか? なら、良かった。

               では、失礼しました。




                あぁ、ご苦労さん。



               ( 隊員が出て行った )



            声: 恋次・・・元気?

               ごめんね・・・。




                何が?




            声: あのね・・・本当は・・・・・・

               「ボイスレター」っていうのがあるって知った時・・・

               「あっ、恋次の好きな人の声録って、送ってあげよう!」って思って
               録音の予約とって、料金も払い込んで・・・

               さてと、頼みに行こう〜って思ったらさぁ・・・・・・

               私・・・恋次が好きな人・・・誰だか知らなくて・・・・・・

               


                お前だョ、鈍感・・・。




            声: でさぁ・・・

               確か、修兵も同じ人好きだったでしょ?
               だから、修兵に教えてもらおうと思って・・・
               修兵の所へ行ったんだけどさぁ・・・
               修兵・・・意地悪で、全然教えてくれないの・・・。

               「 の声送っときゃ、喜ぶョ」・・・だって・・・。

               何回聞いても、それしか言ってくれなくて・・・。

               修兵が、あんなに意地悪だとは、思わなかったョ・・・。




                修兵・・・ありがとな。


               

            声: 恋次・・・ごめんね・・・。

               私の声なんて送っても、しょうがないと思ったんだけどさー・・・
               折角、予約して・・・料金も払った事だし・・・

               「どんな所で、どんな風に録るのかな?」って、興味もあったから
               少し・・・喋ってみようかな?って思って・・・。




                「ごめんね」・・・じゃ、ねぇだろー・・・。

                俺・・・嬉しいョ・・・。




            声: もう・・・一ヶ月くらい経つんだね・・・。

               あっ・・・
               恋次・・・もしかして、私の事なんて忘れちゃった?

               任務も忙しいだろうし・・・。
               元々・・・私の事なんて、頭にないもんね・・・。

               恋次・・・私が誰だか分かる?

               あっ・・・
               そーいえば・・・名前・・・言ってなかったョね・・・。

               えっと・・・
               私は・・・
               14番隊の副隊長を拝命しております、 と申します。

               恋次・・・じゃなくて・・・
               阿散井副隊長様には、大変お世話になって・・・ました・・・。
               誰だか、分からなかったら・・・すいません・・・。

               でも・・・
               何回か一緒に・・・お出かけした事あるんですョ?
               憶えてないかなぁ・・・?




                バーカ!

                俺ん中は、お前でいっぱいなんだョ・・・。
                どーやったら、忘れられんだョ・・・?
                教えて欲しいくらいだ・・・。



               
            声: もし・・・憶えてなくても・・・・・・

               一ファンとして・・・

               私・・・阿散井副隊長様の事・・・毎日、お祈りしています。

               「無事、任務終えて・・・怪我無く、こちらに戻ってこられますように」

               って・・・・・・。




                 ・・・・・・・・・・・




            声: こんなところかな・・・

               あれ?
               どのボタン押すと、止まるんだっけ・・・?

               あれー・・・?
               分かんなくなっちゃった・・・。 どうしよう・・・・・・

               そーいえば・・・
               時間がくれば、勝手に止まるって言ってたな・・・。
               しょうがないや・・・、このまま、待つかな。


               

                止めないで・・・もっと、喋れョ・・・。




            声: 恋次・・・・・・

               多分・・・もう聞いてないだろうから・・・普通に喋ろうかな・・・。

               もしかしたら・・・
               最初から、聞いてくれなかったかもしれないし・・・。

               「送り返される事もある」って、言ってたなぁ・・・。

               恋次は・・・
               私の声なんて聞いても、しょうがないから・・・
               送り返してくるかな・・・?




                そんな事しねーョ!

                コレは・・・俺の宝物にする。

                スゲェ嬉しい・・・。


                 の声が聞けて・・・
                お前が・・・俺の事・・・忘れずにいてくれて・・・。
               



            声: さっき・・・係りの人に聞いたら・・・
               任務終わるまで、まだ後・・・一ヶ月くらいかかるんだってね・・・。

               あっ、恋次・・・怪我とかしてない?
               調子が悪い所とか・・・ない?

               本当はね・・・
               薬湯や、薬も送ろうと思ったの・・・。

               でも、今回は・・・物は送っちゃダメなんだって・・・。

               もし、恋次から要求があれば、それはすぐに送ってくれるんだって。
               だから・・・欲しい物があったら、言ってね。
               どんな薬湯でも、揃えられるからさ。




                お前の薬湯は、不味いからいらねーョ・・・。

                俺は・・・
                薬はいらねぇから・・・
                お前に来て欲しい・・・・・・。


               

            声: あと一ヶ月かぁ・・・・・・長いなぁ〜・・・・・・。




                長い・・・ョな・・・・・・。




            声: 私ね・・・
               恋次が、現世行っちゃってから今日まで・・・
               一日も休みなしで、仕事してるんだョ。




                え・・・・・・

                お前・・・無理すんなョ・・・。
                人手が足んねぇのか?

                後で・・・14番隊隊長に、一筆書くか・・・。
                 ・・・休ませてくれ・・・って。


               

            声: だってさぁ・・・恋次・・・居ないんだもん・・・。




                えっ?




            声: 休みに、必ず会ってた訳じゃないけど・・・

               でも・・・
               休みの日に・・・出かけたり、お喋りしてたのは・・・
               恋次とが、殆どだからさ・・・

               恋次が居ないんじゃ・・・休んでもしょうがないし・・・

               それに・・・・・・


               寂しい・・・。





                 ・・・・・・・・・・・・




            声: ボーっとしてるとさぁ・・・
               恋次の事が・・・心配になっちゃうの・・・。

               「危なくない」って、言ってたけど・・・やっぱり、心配だョ・・・。

               恋次の事が・・・気になって・・・気になって・・・・・・


               恋次居ないと・・・寂しいョ・・・・・・。





                俺も・・・寂しい・・・・・・。




            声: 何だか知らないけど・・・
               暇になると・・・恋次がさぁ・・・・・・出てくるの・・・・・・。





                俺は、お化けか?

                でも・・・
                お前の中に・・・俺が存在してて・・・良かった・・・。




            声: だから・・・
               なるべく、暇は作らないように・・・休みなしにしたの。

               恋次が大変な仕事してるのに・・・
               私が、休んでるっていうのも・・・嫌だったしね・・・。

               



                大変じゃねぇからさー・・・ちゃんと休めョ・・・。




            声: 良かった。




                えっ?




            声: 私・・・恋次の恋人じゃなくて・・・良かった。




                え・・・・・・・・・・・・
               



            声: 恋人だったら・・・こんな思い・・・
               しょっちゅうしてなくちゃ、ならないんだもんね・・・。

               心配で・・・
               胸が張り裂けそうなくらい・・・心配で・・・・・・

               寂しくて・・・
               息も出来なくなりそうな程・・・苦しい・・・・・・。
               




                お前・・・・・・?




            声: あ・・・でも・・・
               ココの人・・・好きになって、恋人同士になれたら・・・
               必ず、そういう思い・・・する事になるんだね・・・。

               やっぱり、恋次にしておくョ。
               恋次とは、恋人同士にはならないから・・・少しだけ「気が楽」だもんね。

               両想いだったら・・・
               こういうのは・・・凄く辛いね・・・。

               



                「俺にしておく」って・・・どーいう意味だ?

                あっ、お前・・・決めつけんなョな!
                何だョ、「恋人同士にはならない」って・・・?




            声: でも・・・
               何で、こんなに寂しいんだろぅ・・・・・・?

               私って・・・・・・

               もしかしたら、恋次の事・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

               ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





                えっ??

                何だョ!?

                変なところで終わるなョ・・・!


                続き・・・
                 、続き送れ。

                送るように・・・催促してみるか・・・。




                 ・・・・・・

                逢いてぇ。

                今すぐ、逢いてぇ・・・・・・。
               



                確かに・・・
                寂しい思いは・・・させるかもしんねぇけど・・・

                でも、決して・・・
                お前を、悲しませたりはしねぇ。

                だから・・・
                俺を信じて・・・
                俺に・・・ついてきてくれ。

                俺は・・・お前と共に、生きたい。




                 ・・・・・・

                逢いてぇ・・・・・・。


                逢いてぇョ・・・・・・・・・・・・。

                                                                    fin                         2006,10,5 up

 

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あとがき

今回のお話は、今までのとは、ちょっと違った感じでしたが・・・
お互い、「自分の事は、忘れちゃってるだろうな〜?」と、思いつつ
二人の中には、お互いが「深〜く」沁み込んでいる〜
って感じですかね〜?(笑

長文、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
お時間ありましたら、また遊びに来て下さいませ。