紫の花(前編)






               「キャーーーーーッ!」



               (  が、崖から落ちた )



               いてててて・・・・・・
               うッ・・・、足が・・・・・・
               折れてはいないけど、とても立って歩ける状態じゃない・・・。


               どうしよぅ・・・

               こんな山の中で一人・・・

               痛い・・・


               「恋次・・・助けて・・・・・・・・・・・・」

                          ・
                          ・
                          ・

               ( 同時刻 ・ 遠く離れて・・・ )



           恋次:  ん?


               ( 恋次が足を止め、辺りを見回した )


           恋次:   ・・・?


          
           隊員: 阿散井副隊長・・・? どうかされましたか?



           恋次:  今・・・何か聞こえなかったか?



           隊員: いえ・・・、何も・・・。



           恋次:  そーだョなー・・・
                こんな所に、 が居る訳ねぇもんなぁ・・・。

                幻聴か?

                でも・・・嫌な予感がする・・・。



           隊員: 阿散井副隊長?



           恋次:  お前ら、先に戻っててくれ。
                俺、ちょっと寄る所ができた。



           隊員: 分かりました。



               ( 恋次が隊員達と別れ、医療所に向かった )




               〔 医療所前 〕




               ( 扉が開き、中から修兵が出てきた )



           修兵: あっ、恋次・・・。
               何しに来た?



           恋次:  何しにって・・・・・・



           修兵:  なら居ねぇぞ?
               じゃぁ・・・俺、急ぐから。



           恋次:  えっ?
                ちょ・ちょっと待てョ!

                「居ねぇ」って・・・ は、何処に行ったんだョ?



           修兵: 待ってる暇はねぇ!

               俺も・・・詳しい事は、分かんねぇ・・・。
               とにかく急がねぇと・・・日が落ちる。



               ( 修兵が走り出し、恋次が付いていった )



           恋次:  何処行くんだョ?



           修兵: 「山」。

                一人で向かったそうだ。



           恋次:  えっ!?



           修兵: この時期だけにしか採れねぇ薬草採りに・・・。



           恋次:  一人で行ったのか?
                誰か、同行者は?



           修兵: 一人だって言ってんだろ!
               何、聞いてんだ。

               ただ・・・
               その薬草が採れる場所は、大体決まってて・・・
               そこには、養成所のやつらが来てるらしい。

               山までの道は、危険じゃねぇし・・・
               その山は、薬草の宝庫だから、養成所のやつらの為に
               厳重に、結界が張られてるって事だ。

                は・・・
               「危険じゃねぇ」って判断して、一人で行ったんだろうな・・・。



           恋次:  危険じゃねぇって・・・
                外敵は、居ねぇかもしんねぇけど・・・。

                 の体力じゃ、山までの長距離は厳しいだろうし・・・
                何よりも・・・山登りは、一人じゃ無理だろー・・・。



           修兵:  の判断ミス。



           恋次:  えっ?



           修兵: 今しか採れねぇっていう「その薬草」は
               相当貴重な物らしくて、薬屋では手に入んねぇらしい・・・。



           恋次:  何で?
                少ししか採れねぇのか?



           修兵: それもあるが・・・
               相当「目が利く」ヤツじゃねぇと
               どれがその薬草か、分かんねぇって事だ。

               14番隊で、その薬草が分かるのは、隊長と だけ。

                は・・・
               養成所時代、毎年「その薬草採り」に参加してたみたいで・・・。

               養成所から「その山」までは、比較的近い。
               ココから行くのとは、全然違う。

               更に、その薬草が生えてる場所ってのは・・・
               養成所側の斜面なんだそうだ。

               こっち側からだと・・・
               山越えて・・・向こう側になるんだョ・・・。

                にとっては「行き慣れた場所」なんだろうが・・・・・・



           恋次:  あのバカ・・・
                ココからだと大変だって、考えずに行ったのか・・・。

                「一言」言ってくれりゃ、何とかしたのに・・・。
                何で、何にも言わずに、一人でなんて・・・。



           修兵: まぁ、まだ・・・
               「何かあった」って、決まった訳じゃねぇ。

               もう、向こうに着いてて・・・
               養成所のやつらと、楽しくやってるかもしんねぇし・・・。



           恋次:  そんな事・・・思ってねぇだろ?

                修兵にも、聞こえたんだろ?

                 の・・・「助けて」って声が・・・?



           修兵: ・・・あぁ。

               ココで、何を言っても始まんねぇ。
               日が落ちる前に、早く探すしかねぇ・・・。



           恋次:  そーだな・・・。

                ん・・・?

                あれって・・・鳳じゃねぇか?
                ずっと前方走ってるヤツ・・・?



           修兵: あぁ・・・、そうみてーだな・・・。
               今、ココを走ってるって事は・・・・・・



           恋次:   のヤツ・・・
                一体、何人に助け求めてんだョ・・・?

                俺一人で、十分だっての。



           修兵: でも・・・、おかしいじゃねぇか・・・?

               俺は・・・「 の声」が聞こえて、すぐ行動した。

               医療所に行って、話し聞いて・・・出た所で、恋次に会った。
               俺より前を、鳳が走ってる訳ねぇはずだ・・・。



           恋次:  鳳は・・・元々、医療所に居て・・・
                そこで「 の声」を、聞いたとか・・・?



           修兵: たとえそーだとしても・・・
               こんなに差をあけられるはずはねぇ。
               俺達と鳳じゃ・・・「速さ」が違う。



               ( 二人が鳳に追いついた )



           恋次:  鳳!



            鳳: あっ、阿散井副隊長・・・、檜佐木副隊長・・・。

               良かった・・・。

                副隊長を、探しに行かれるんですョね?



           修兵: お前にも、聞こえたのか?  の声・・・・・・?



            鳳: はっ? 声って・・・?



           恋次:   が「助けて」って・・・。
                だから、来たんじゃねぇのか?



            鳳: えっ・・・?
               「助けて」って事は・・・
               やっぱり、何かあったんですね、 副隊長・・・・・・。



           修兵: どーいう事だ?
               何でお前が、ココを走ってる?



            鳳: えっと・・・
               養成所の方から、親睦会に連絡が入ったんです。

               「この時間までに来る」って言った時間に
                副隊長がいらっしゃらないって・・・。



           恋次:  お前・・・
                 が一人で山に向かった事・・・知ってたのか?



            鳳: はい。
               俺は直接、 副隊長から聞きました。

               親睦会の方へは・・・
               14番隊の隊長さんから、うちの隊長に連絡があったみたいで・・・。

               隊長命令で、今回の養成所の「薬草採り」を
               バックアップしてやれ、って事になりまして・・・。

               あっ、勿論・・・ 副隊長が参加されるからなんですけどね。

               「薬草採り」の方で、何かあったら
               親睦会に、連絡が入るようになってました。



           修兵: 鳳は、親睦会メンバーじゃねぇだろ?
               何でお前が、向かってんだョ?



            鳳: それは・・・
                副隊長が・・・

               「私に何かあったら、鳳君が来てね」って・・・・・・




           恋次:  止まれ!




               ( 恋次が足を止め、他の二人も足を止めた )




           修兵: 恋次・・・急がねぇと・・・・・・。



           恋次:  すぐ済む。




               ( 恋次が、鳳を殴り飛ばした )



           恋次:  何で、一人で行かせた!?

                知ってて、何で一人で行かせた!!??



            鳳: そ・それは・・・・・・
                副隊長が、一人で行くって・・・・・・。
               ついて来ないでくれって・・・・・・。



           恋次:  何かあってからじゃ、遅いんだろ!?

                高が薬屋にだって、一人じゃ行けねぇヤツなんだぞ!?

                薬屋には、「誰」がついてってるんだョ?



            鳳: 俺・・・です・・・。



           恋次:  何の為に?



            鳳: 一人じゃ・・・危ないから・・・です・・・。




               ( もう1度殴ろうとした恋次を、修兵が止めた )




           修兵: よせ。
               俺達とは、違うんだ。

               こいつにとっては、 は上官だ。

               上官命令で「ついてくるな」って言われたら・・・どーにもなんねーョ。



           恋次:  そんなの知るか!

                好きなんだろ?
                守ってやりてぇって、思わねぇのか?

                俺なら・・・何言われても、ついて行く。
                 に、気付かれねぇようにしてでもな・・・。



            鳳: 申し訳ありませんでした・・・。

               あ・あの・・・
               阿散井副隊長は・・・ご存知なかったんですか・・・?



           恋次:  ん・・・・・・?

                知らなかった・・・。

                あいつ・・・何も言ってくれなかった・・・・・・。



           修兵: 俺たちもダメって事だ。
               知らされもしねぇんだもんな・・・・・・。

               とにかく急ごう。
               ケガしてるかもしんねぇ・・・。

                          ・
                          ・
                          ・
                          ・
                          ・

               〔 山の中 〕



           修兵: 少し暗くなってきたな・・・。
               早く見つけねぇと・・・。



            鳳: あっ、あそこ・・・
               「紫の花」が咲いてます。



           恋次:  花?



            鳳: はい。

                副隊長・・・確か言ってました。

               「この時期には、薬になる『紫の花』も咲いてる」って・・・。

               その花は・・・
               急斜面に咲いてる事が多いから、採るのがちょっと大変だって・・・。



           修兵: 今まで歩いて来て、「あの花」見つけたのは、初めてだョな?



            鳳: はい。



           恋次:  行ってみようぜ。



               ( 3人が、紫の花の咲いてる所へ行った )



           修兵: 幾つか採った形跡があるなぁ・・・。



            鳳: あっ、ココ・・・・・・

               何かが、滑り落ちた痕跡が・・・・・・。



           恋次:  本当だ・・・。

                ココから落ちたのか・・・?

                こんな急斜面・・・。



            鳳: 「 副隊長〜〜〜〜〜! いらっしゃいますか〜〜〜〜〜?」



           恋次:  返事・・・ねぇな・・・。



           修兵: ココから落ちたんじゃ、意識ねぇかもしんねぇし・・・・・・
               俺、下りてみる。



           恋次:  俺も行くョ。



            鳳: 俺も・・・



           修兵: 鳳は・・・
               他にも、「この花」が咲いてる斜面、探してみてくれ。

               もうすぐ日が落ちる・・・。
               そーしたら、花の色・・・分かんなくなるから。

               もし、ココに居なかったら、すぐお前探して行くから。



            鳳: はい、分かりました。

                                                         To be continued                  2006,11,8 up 

 

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