紫の花(後編)




               ( 恋次と修兵が、斜面を下りた )


           恋次:  居ねぇなー・・・。
                あそこから、真っ直ぐ落ちたとしたら、この辺に居るはずだけど・・・。



           修兵: 紫の花だ・・・・・・。



           恋次:  えっ?



           修兵: あそこに落ちてる・・・。
               あっちに移動したんだ。



               ( 修兵が、落ちてる紫の花を拾った )



           恋次:  あっ、あそこにも花が・・・。
                あの花の先の斜面に、横穴がある・・・。
                きっと、あそこだ。



               ( 恋次と修兵が、斜面に開いた横穴に入った )



           恋次:   ーーーーー!



           修兵:  !!



           恋次:  居た・・・。



               ( 恋次と修兵が、 に駆け寄った )



           恋次:   ・・・・・・。

                意識ねぇけど・・・大丈夫か?



           修兵: 大丈夫。
               鼓動は、ハッキリしてる。



           恋次:  お前、どこに顔つけてんだョ!



           修兵: しょうがねーだろ!
               心臓が動いてるか、どうか・・・確認しなきゃ。



           恋次:  脈とか・・・他に方法あるだろー。



           修兵: そんな悠長な事、してられるか!
               緊急事態なんだぞ!?



           恋次:  ・・・とか、何とか言って・・・・・・。
                他の方法のが、早く分かるじゃねぇかョ・・・?
                鼻の前に、手をかざすとか・・・
                せめて、首筋触るくらいにしとけョな・・・・・・。



           修兵: 足が酷いなー・・・。
               落ちた所から、よくココまで来れたョ・・・。
               ココで、一晩明かすつもりだったんだろうな〜・・・。



           恋次:  都合悪くなると、すぐ、そーやって話し変えて・・・・・・。



           修兵: 何か言ったか?



           恋次:  一晩じゃ、済まねぇだろー?
                全身・・・傷だらけじゃねぇか・・・・・・。



           修兵: だから・・・
               俺と恋次の名前・・・念じたんだろ・・・?

               「助けて」って・・・・・・。



           恋次:  そーだな・・・。

                 ・・・
                お前の「心の声」・・・俺に、しっかり届いたからな。

                あっ、でも・・・
                今度からは、俺一人にしとけョな。



           修兵: こんな事、次があったら困るだろー!

               バーカ!!



           恋次:  そーだけど・・・・・・



               ( 修兵が、 を抱き上げた )



           修兵: 早く、医療所に連れて帰ろう。

               俺が、 を連れて行くから・・・
               恋次は、鳳の方を頼む。



           恋次:  えっ!?
                嫌だョ!

                俺も一緒に、医療所へ行く。



           修兵: あいつ置いて、帰る訳にいかねぇだろー?



           恋次:  じゃぁ・・・俺が を連れて行くから・・・お前が鳳・・・・・・




                恋次・・・・・・、修兵・・・・・・。




           修兵: あっ、気が付いたか。
               もう、大丈夫だからな。
               すぐに医療所へ、連れてってやる。




                えっ?

                ココって・・・私が落ちた所?




           修兵: あぁ。




                じゃぁ・・・
                このまま、山の向こう側に連れてって・・・?

                今だけしか採れない、貴重な薬草があるの。




           恋次:  そんなの、どーでもいいだろー!?
                傷の手当てが先だョ。

                大丈夫か・・・?
                痛いんだろ・・・?




                うん・・・。

                でもね・・・
                薬草の所には、養成所の皆が居るの。




           恋次:  分かってるョ。
                奴らには、連絡しといてやるから。




                恋次・・・?

                医療所に帰るよりも・・・
                薬草の所に行く方が、早いでしょ?




           恋次:  そーだけど・・・・・・
                早く治療しねぇと・・・・・・大怪我してるんだぞ!?




                うん・・・。

                だからさー・・・薬草の所にさぁ・・・・・・。

                確か、教官も来てるから・・・
                このくらいの怪我、すぐに治してくれると思う・・・。




           修兵: 養成所の奴らって・・・・・・



           恋次:  皆・・・治療出来るんだったな・・・・・・。




                うん。




           修兵: 分かったョ。

               途中、鳳拾って・・・薬草の所へ行こうな。




                鳳君も来てるの?




           恋次:   が・・・
                「私に何かあったら、来てくれ」って・・・言ったんだろ?

                何で、鳳なんだョ?



           修兵: 恋次・・・
               今、そんな事言ってる場合じゃねぇだろー?

               まずは、早く怪我を治してもらって・・・話は、それからだ。




           恋次:  治してもらうのって・・・教官じゃねぇとダメなのか?




                何で?

                ココに、薬草採りに来てる人達は
                皆優秀だから、誰でも治療出来るけど・・・?




           恋次:  じゃぁ・・・他のヤツに治してもらえョ・・・?




                うん・・・。




           修兵: 恋次・・・、 の事を、第一に考えろ。

               教官が、一番早く治せるんだろ?
               なら、教官に治してもらえばいい。
               
               じゃぁ、移動するからな。
               振動で、痛いかもしれないけど・・・少しだから、我慢してくれな。




                うん、ありがとう・・・。

                恋次・・・、来てくれて、ありがとう・・・。




           恋次:  え・・・・・・あぁ・・・・・・。

                          ・
                          ・
                          ・
                          ・
                          ・

               〔  のテント 〕



               ( 治療が終わり、教官がテントから出てきた )



           教官: もう大丈夫です。

               ただ・・・ はあなた方のように
               体そして精神面も、鍛えている訳じゃありませんので
               傷が治ったからといって、すぐに動かす訳にはまいりません。

               安静にさせておいてあげて下さい。



           恋次:  連れて帰っちゃいけねぇのか?
                山の中のテントに寝かせておくより、医療所に運んで行って
                ゆっくり休ませた方が、いいんじゃねぇのか?



           教官: 今は、動かさない方が良いかと・・・・・・。



           修兵: 分かりました。
               治療、感謝します。
               あとは、俺達で対処しますので。



           教官: はい・・・・・・。



               ( 教官が、自分のテントに戻っていった )



           恋次:  あいつ・・・
                 の事、帰したくねぇから「あんな事」言ってんだろ?



           修兵: そーかもしんねぇなー。

               でも・・・
                も、薬草採りたがってたし、帰りたがんねぇだろー?

                の好きなようにさせてやろうぜ。
               明日には、元気になるんだろうからさ。



               (  のテントに修兵が入り、その後、恋次も続いた )



           修兵:  ・・・大丈夫か?




                うん。
                痛みも全く無いし・・・さすが教官だな〜、私も見習わなくちゃ。




           恋次:  あいつ・・・何もしなかったんだろうな?




                えっ?
                治療してくれたョ?




           恋次:  それ以外に・・・。
                無闇に触ったり・・・しなかっただろうな?




                恋次・・・・・・。
                教官は、そんな人じゃないョ。

                患者さんが女の人だからって、変な事するような人だったら
                教官になんてなれないし・・・
                養成所には、そんな変な人はいないョ。




           恋次:  患者に、何かするんじゃなくてさー・・・

                惚れた女が、怪我して横たわってたら・・・
                抱きしめたり・・・したくなるだろ?

                あいつなら、怪我の程度だって分かるんだし・・・
                治す自信もあるんだ。

                俺達みたいに、怪我したお前見て、あたふたしねぇだろうし・・・
                余裕もって・・・接する事が、出来んだろうからさ・・・。




                好きな人には、どう対処するか知らないけど
                私は、そういう対象じゃないから。




           恋次:  何もしなかったんなら、それでいいんだ。

                テントに、二人っきりにさせたから・・・ちょっと心配でな・・・。




                考え過ぎだョ。

                でも・・・
                いつもより、優しくしてくれたな〜・・・教官・・・。

                「痛かっただろぅ・・・大変だったな・・・」

                って・・・・おでこに「チュッ」って・・・。




           恋次:  えーーーーー!

                あの野郎! 許さねぇー!



           修兵: それを「優しさ」って感じるなら、俺が幾らでもしてやるョ。



           恋次:  えっ!?

                や・やめろョ、修兵!



           修兵: 冗談だ。

               あの野郎・・・
                が、怪我して弱気の時に・・・調子に乗りやがって・・・
               絶対、許さねぇー。




                ど・どうしたの?
                何、怒ってるの・・・?




           修兵: ん?
               怒ってないョ。

               ただ・・・
                の周りには、「害虫」が多いから、駆除しなきゃな〜って思ってさ。




                えっ?
                このテントの中に「虫」がいるの?




           修兵: さっきまで居たんだョ。




                本当に・・・?
                嫌だなぁ・・・・・・。




           修兵: 大丈夫。
               この先、絶対に、 には近寄らせないから、安心してていいョ。




                うん・・・。

                あ・・・、そーいえば、鳳君は?




           恋次:  帰した。




                帰っちゃったんだ・・・。
                まだ、お礼・・・言ってなかったのに・・・。




           修兵: ・・・随分、ガッカリしてんだな・・・。

               鳳が、そんなにいいか?
               どこがいいんだョ? あいつの・・・?




                えっ?




           修兵: 気分悪くなった。

               これ以上、 が鳳の話しをするようなら・・・
               俺は、あいつを・・・叩き潰す。

               あんなヤツ・・・何で、頼りにしてるんだョ?

               鳳には話せて・・・俺には話せねぇか?




                修兵・・・?




           恋次:  平静装ってるけど・・・実は、ショック大きかったんだョ。
                 が、ココに来る事を、言ってくれなかった事・・・。

                鳳にだけ言って・・・
                さらに、「私に何かあったら、来てね」なんて、言った事が・・・。

                もちろん俺も・・・何も言ってもらえなくて、悔しい・・・・・・。



           修兵: 何で俺には、何にも言ってくれなかったんだョ?




                誰にも言う気は、なかったんだけど・・・

                たまたま、養成所から「薬草採りに来ないか?」って手紙がきた時
                鳳君が傍に居て・・・
                一緒に手紙・・・見てたから・・・。




           修兵: 一緒にって・・・それが、気に食わねぇ!

               何で、 にきた手紙を、鳳に見せたりするんだョ?




                別に、理由はないけど・・・

                養成所からきた手紙だったから、鳳君・・・すごく気にして・・・

                「養成所に行くんですか?何の為に?誰に会いに?」って・・・。

                だから、手紙見せて・・・。

                鳳君は、「一緒に行きます」って言ってくれたけど、私は断って・・・
                それでも鳳君は「往き帰りだけでも、同行させて下さい」って・・・。

                でも私は・・・
                「一人で大丈夫だから、来なくていい」って、ちょっときつく言ったの。

                ちょっと言い過ぎちゃったかなぁ・・・?って思ったから

                「私に何かあったら、鳳君が来てね」
                「迷惑かけないようにするけど・・・もしもの時は、頼りにしてるから」

                って・・・言ったの・・・。




           恋次:  「一人で出かけるな」って・・・いつも言ってるのに・・・

                「出かける時は、必ず言いに来い」って、言ってるのに・・・

                何で、言いに来ねぇんだョ!?




                恋次や修兵にも・・・それぞれ仕事はあるんだし・・・
                話せば、気遣ってくれるでしょ?

                今回の山までのルートは、前もって親睦会の人達が
                危険じゃないの分かってるのに、さらに一度見回ってきてくれたの。

                もう・・・その時点で、十分迷惑かけちゃってるんだけどさぁ・・・
                それ以上・・・誰にも迷惑かけたくなかったの・・・。

                あそこから落ちたのだって・・・
                私が歩くルート外れて「紫の花」採りに行ったからだし・・・。

                普通に行ってれば、全然問題なかったんだもん・・・。




           恋次:  迷惑、迷惑って・・・俺がついてったら、そんなに迷惑か?




                えっ・・・?

                そーじゃなくて・・・・・・




           恋次:  何が迷惑なんだョ?

                俺は一度だって・・・
                お前からの頼みを「迷惑」だなんて思った事はねぇぞ!?




                恋次・・・・・・。




           修兵: 言ってくれない方が、迷惑だョな。

               心配し続ける方の身にも、なってくれョ。




                修兵・・・・・・。




           恋次:  来年も来るんだろ?
                その時は、二人で・・・・・・



           修兵: 三人で来ような。




                うん・・・。




           修兵: 明日は、朝から薬草採りか〜。
                はもう・・・寝た方がいいな。




                うん。
                恋次、修兵・・・いろいろありがとう・・・。

                あっ、恋次達のテントはね・・・
                教官の隣に、作ってくれたみたいだから、そこに泊まってね。
                ちょっと窮屈だけど・・・。




           恋次:  俺はココでいいョ。



           修兵: 俺もココでいい。




                えっ・・・?

                ココって・・・ココじゃ狭いでしょ?
                このテントは、二人用だし・・・三人じゃ寝るのは無理だョ・・・?




           恋次:  大丈夫だョ。

                ピッタリくっ付けば、何とかなる。




                え・・・・・・・・・・・・・




           修兵:  を、俺以外の「誰か」と二人にさせる訳にはいかねぇからな。

               きつくても、しょうがねーョ。

                が・・・
               「俺と二人がいい」って言うなら、それでいいけどさ。



           恋次:  そんな事、言う訳ねぇだろー!

                 、狭くても三人で我慢しろョな。

                「俺と二人がいい」ってんなら、話は別だけど。




                あ・あのね・・・私は、一人で・・・・・・




           修兵: ダメだ!



           恋次:  お前一人にしたら、あの教官が入って来ちゃうだろー。




                え・・・?

                入ってなんてこないョ・・・。




           修兵: いや、あの教官は最初から、このテントで
               「 と二人で泊まる事」を、考えてる。

               じゃなきゃ、 に「二人用」のテントなんて用意しねぇだろー。
                は、小さいんだし・・・一人用で、十分なんだから。



           恋次:  あいつの魂胆なんて、見え見えなんだョ。



           修兵: 「害虫」は、寄せ付けないって言っただろ?

                は、安心して寝てていいからな。



               ( 恋次と修兵が、 の両隣に横になった )




                え・・・で・でも・・・・・・




           恋次:  これがベストだろ?

                 を真ん中にして、川の字で寝る。




                せ・せめて・・・
                恋次も修兵も・・・上を向いて寝てくれる?

                二人共こっち向いてたら・・・私、身動きとれないョ・・・。




           修兵: 狭いからさー・・・横向くしかないんだョ。



           
                じゃぁ・・・反対側向いて欲しいな・・・?




           恋次:  どっち向こうが、俺達の勝手だろ?
                 も、好きな方・・・向けばいいじゃねぇか?




                い・いいョ・・・・・・。
                私は、上向いて寝るから・・・・・・。




           修兵: ちょっと、こっち向けョ・・・?



           恋次:  いや、俺の方向けョ・・・なっ、



           修兵: 恋次の方なんて、向かなくていいからさぁ・・・
                ・・・、ちょっとこっち・・・見てくれョ・・・?



           恋次:  ダメだ!
                絶対、修兵の方は見るな!!
                むこう向いたら、ただじゃ置かねぇからな!



           修兵:  ・・・大丈夫だから。
               俺がついてるからさ。
               乱暴な恋次なんて、放っておいて・・・二人で仲良くしような。



           恋次:  何だと!!




                もぅ・・・・・・
                これじゃ、眠れないョ・・・・・・。

                二人共・・・ケンカなら外でしてョ・・・・・・。




           恋次:  うるさい!
                ちょっと黙ってろ。

                今、決着つけてやるからな。



           修兵: おぅ! 望むところだ。

               恋次に は、渡さねぇ!



           恋次:  それは、俺のセリフだ!
                お前の出る幕なんて、ねぇんだョ!




                いい加減にして・・・・・・。

                あっ、そーだ!

                『はい』、恋次・・・「このお花」あげる。
                助けに来てくれたお礼だョ。
                良い匂いがするから、嗅いでみて?

                修兵にも・・・『はい』。




           恋次:  え・・・
                花なんて、いらねぇけど・・・ が、くれるっていうなら・・・。




                うん。
              
                修兵も・・・良い匂いするからさ〜・・・。




           修兵: うん・・・、ありがとう・・・。



               ( 二人が花を顔に近づけ、匂いを嗅いだ )




                どぅ?
                良い匂いする?




           恋次:  全然しねぇー。



           修兵: 匂いは感じないけど・・・なんか・・・眠くなってきたような・・・・・・



           恋次:  俺も・・・急に眠く・・・・・・




                二人共、疲れてるんだョ。




           修兵:  ・・・この花・・・・・・




                ん?
               
                ほら、さっき採った「紫の花」だョ。




           恋次:   ・・・・・・
                この花って・・・薬になるって・・・・・・




                うん。




           修兵: どんな・・・効き目・・・なんだョ・・・・・・?




                う〜んとね〜〜〜・・・・・・




           恋次:  ( 『スゥーーー』 )



           修兵:  ・・・お前・・・謀ったな・・・・・・

               ( 『スゥーーー』 )




               ( 二人が眠りに落ちた )




                この「紫の花」は、睡眠薬になる花なの。

                加工前の、この花その物は、凄く強烈なんだョ。

                だから・・・

                この花に、顔を近づけて、思い切り吸い込むと・・・・・・

                ( エヘヘ・・・ )

                即、眠れるの。


                ・・・って、教えられてるけど
                私も、周りの人も、そんな事した事ないから
                どれ程の効果があるか、分からなかったんだけど・・・

                成る程ね。

                凄い効果。

                加工する時は、気を付けなくちゃね。


                恋次・・・修兵・・・
                実践してくれて、ありがとう〜。


                そして何よりも・・・

                私の「心の声」を聞いて・・・

                助けに来てくれて・・・・・・


                ありがとう〜!  

                                                     fin                                            2006,11,17 up  

 

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あとがき

最強ヒロイン(笑)・・・ではないのですが・・・
結局、ヒロインの方が「一枚上手」のようでして〜
男性陣は、キリキリ舞させられてます〜(笑

長文、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
お時間ありましたら、また遊びに来て下さいませ。